「胃が痛い」「なんとなく重い」「食後にムカムカする」——そんな不調は、体が「胃を見てほしい」と送っているサインです。
でも、胃痛や胃もたれには、じつにさまざまな原因があります。同じ「胃が痛い」でも、食べ過ぎからくるものなのか、ストレスなのか、ピロリ菌なのか、それとも別の何かなのか——原因によってケアの方法はまったく異なります。
前回の【整う、胃とおなかノート①】で学んだ「胃酸と粘液のバランス」を土台に、今回はそのバランスが崩れる原因を、ひとつひとつ丁寧に見ていきます 🌿
胃痛・胃もたれが起きるメカニズム
①で学んだように、胃の健康は「胃酸の攻撃」と「粘液の防御」のバランスで成り立っています。
このバランスが崩れるのは、大きく分けて2つのパターンです:
| パターン | 状態 | 起こりやすい症状 |
|---|---|---|
| 胃酸が多すぎる/粘液が少なすぎる | 粘膜が傷つきやすい | 胃痛・胸焼け・潰瘍 |
| 胃の動きが乱れる | 蠕動運動の低下・過剰 | 胃もたれ・膨満感・吐き気 |
では、このバランスを崩す「原因」は何でしょうか。
胃痛・胃もたれの主な原因
1. 急性胃炎——突然の胃の炎症 🔴
原因: 食べ過ぎ・飲み過ぎ・刺激の強い食べ物・アルコール・ストレス・一部の薬など
症状: 突然の強い胃痛・吐き気・嘔吐・食欲不振
胃粘膜に急激な炎症が起きた状態です。多くの場合、原因を取り除いて安静にすれば数日以内に回復しますが、繰り返す場合は慢性化に注意が必要です。
2. 慢性胃炎——じわじわ続く胃の疲れ
原因: ピロリ菌感染(最多)・長期の薬の服用・ストレス・アルコール・加齢など
症状: みぞおちの鈍痛・胃もたれ・膨満感・食欲不振(症状がほとんど出ないことも)
胃粘膜の炎症が長期にわたって続く状態です。慢性胃炎の多くはピロリ菌感染が背景にあるとされており、放置すると胃潰瘍や胃がんリスクの上昇につながる可能性があります。胃内視鏡検査(胃カメラ)で発見されることが多い状態のひとつです。
3. ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)——胃に住む細菌 🦠
ピロリ菌とは何か?
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に生息する細菌です。1983年に発見されるまで「胃は強酸性だから細菌は生きられない」と考えられていましたが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素でアンモニアを産生し、周囲の酸を中和することで胃の中で生き延びます。
ピロリ菌が引き起こすこと
| 状態 | 内容 |
|---|---|
| 慢性胃炎 | ほとんどの感染者に起きる |
| 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 | 感染者の約15〜20%に発症 |
| 胃MALTリンパ腫 | まれだが関連が認められている |
| 胃がん | ピロリ菌感染は胃がんの最大リスク因子 |
感染経路と除菌
主な感染経路は幼少期の経口感染(飲料水・食べ物・親からの口移しなど)とされます。日本では50代以上の感染率が高く、衛生環境が整った現代では若い世代の感染率は低下しています。
感染が確認された場合は除菌療法(抗菌薬と胃酸分泌抑制薬の組み合わせ)が有効で、除菌に成功すると胃炎・潰瘍の再発リスクが大きく下がります。
ピロリ菌の検査は胃内視鏡(胃カメラ)や血液・尿・呼気検査などで確認できます。「最近胃の調子が悪い」「家族にピロリ菌感染者がいる」という方は、一度検査を受けることをおすすめします。
4. 胃・十二指腸潰瘍——粘膜に「穴」があいた状態
原因: ピロリ菌感染(最多)・NSAIDs(鎮痛剤)の長期服用・強いストレス
症状: みぞおちの強い痛み(空腹時・食後)・黒色便(出血がある場合)・吐血
胃酸が粘膜を貫通して、粘膜よりも深い層まで傷ついた状態です。出血を伴う場合は緊急性が高く、早急な医療機関への受診が必要です。
黒色便(タール便)や吐血が見られた場合は、すぐに受診してください。
5. 機能性ディスペプシア——検査では異常がないのに症状がある
特徴: 胃カメラで炎症・潰瘍などの器質的異常が見つからないにもかかわらず、胃痛・胃もたれ・早期満腹感などが続く状態
原因: 胃の運動機能の異常・知覚過敏(胃が刺激に敏感になっている)・心理的ストレス・腸内環境の乱れなどが関与
日本では人口の約11〜17%が機能性ディスペプシアを抱えているとされ、「胃が弱い体質」と思われていた不調がこれに当たることも多いです。ストレスや生活習慣の改善が症状緩和に有効なケースが多くあります。
6. 食習慣の乱れ——胃に負担をかける習慣
早食い・ドカ食い
よく噛まずに飲み込むと、消化されていない大きな食塊が胃に届き、胃への負担が増大します。また、一度に大量に食べると胃が急激に拡張し、蠕動運動のリズムが乱れます。
脂肪の多い食事
脂質は消化に時間がかかるため、胃にとどまる時間が長くなり、胃もたれの原因になります。揚げ物・ファストフード・濃い味付けの食事が続くと胃への負担は大きくなります。
アルコール
アルコールは胃粘膜を直接刺激し、粘液の産生を低下させて胃酸の攻撃にさらされやすくします。また、胃酸の分泌を増やすため、空腹時の飲酒は特に粘膜にダメージを与えやすいです。
カフェインの過剰摂取
コーヒー・紅茶・エナジードリンクなどのカフェインは胃酸分泌を増やす作用があります。空腹時のコーヒーが習慣になっている方は要注意。
不規則な食事時間
食事の時間が不規則だと、胃酸の分泌リズムが乱れ、胃粘膜が空の状態で胃酸にさらされる時間が長くなります。
7. 薬の副作用——意外な原因
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
ロキソニン・アスピリン・イブプロフェンなどの鎮痛剤は、胃粘膜を保護するプロスタグランジンの産生を阻害するため、胃粘膜が傷つきやすくなります。痛み止めを頻繁に使う方は、胃への影響に注意が必要です。
ステロイド薬・抗血小板薬・抗凝固薬
長期服用は胃粘膜への影響があることがあります。服用中に胃の不調を感じたら、担当医に相談を。
こんな症状は早めに受診を 🏥
以下の症状がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください:
- 黒色便(タール便)・吐血 → 出血性潰瘍の可能性
- 急激で激しい腹痛 → 穿孔(穴あき)などの緊急事態の可能性
- 体重減少・食欲不振が続く
- 飲み込みにくさ(嚥下困難)
- 40歳以上で初めての胃の不調
「たかが胃痛」と放置せず、気になる症状が続く場合は胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けることが、自分の胃を守る最も確実な方法のひとつです 🌿
まとめ
- 胃痛・胃もたれは「胃酸の過剰」か「胃の動きの乱れ」から起きることが多い
- 主な原因:急性・慢性胃炎・ピロリ菌・胃潰瘍・機能性ディスペプシア・食習慣・薬の副作用
- ピロリ菌は慢性胃炎・胃潰瘍・胃がんと深く関わる重要なテーマ。検査と除菌で大きくリスクを下げられる
- 気になる症状が続く場合は、胃内視鏡検査で「見て確かめる」ことが最善の一歩
原因を知ることで、適切なケアが選べるようになります。次回は、食事の面から胃を守るアプローチをお伝えします 🌸
次回予告 🌿
次回は【整う、胃とおなかノート③】胃を守る食事|消化によい食材・避けたい食べ方と薬膳の知恵。
胃にやさしい食材とは何か、避けるべき食べ方とは何か。東洋医学の薬膳の視点も取り入れながら、毎日の食卓で実践できる「胃を守る食の知恵」をご紹介します 🌿
整う、うずうずノート


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