「膵臓」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか。
「糖尿病と関係がある」「膵臓がんは怖い」——なんとなく知っているけれど、どこにあって、何をしているのかは、意外とわからないという方が多い臓器かもしれません。
膵臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、トラブルが起きても症状が出にくく、気づいたときには病気が進んでいることがあります。だからこそ、しくみを知って、サインを見逃さないことが大切です 🌿
膵臓とは——みぞおちの奥に横たわる多機能な臓器
膵臓は、胃の裏側・みぞおちの奥深くに位置する、長さ約15〜20cmの細長い臓器です。右端(頭部)は十二指腸に接し、左端(尾部)は脾臓の近くまで伸びています。
位置が深く、胃・十二指腸・脊椎に囲まれているため、エコーでも見えにくいことがあります。
膵臓の2つの大きな役割
膵臓は「外分泌機能」と「内分泌機能」というふたつのまったく異なる働きを持つ、非常に特殊な臓器です。
外分泌機能——消化酵素を作る
膵臓は1日に約1〜1.5リットルの膵液(すいえき)を分泌します。膵液には強力な消化酵素が含まれており、十二指腸で食べ物の消化を助けます。
| 消化酵素 | 分解するもの |
|---|---|
| 膵アミラーゼ | 糖質(でんぷん) |
| リパーゼ | 脂質(脂肪) |
| トリプシン・キモトリプシン | タンパク質 |
これらの酵素は膵臓の中では不活性な状態で作られ、十二指腸に出て初めて活性化します。この仕組みが崩れると、酵素が膵臓自身を消化してしまう——それが「膵炎」です。
内分泌機能——血糖をコントロールするホルモンを作る
膵臓の中に散らばる「ランゲルハンス島」と呼ばれる細胞群が、血糖値を調節するホルモンを分泌します。
| ホルモン | 分泌細胞 | 働き |
|---|---|---|
| インスリン | β細胞 | 血糖値を下げる。細胞にブドウ糖を取り込ませる |
| グルカゴン | α細胞 | 血糖値を上げる。肝臓からブドウ糖を放出させる |
| ソマトスタチン | δ細胞 | インスリン・グルカゴンの分泌を調整する |
インスリンを作るβ細胞が壊れたり、インスリンの効きが悪くなったりすることで糖尿病が起きます。
膵臓のトラブル——種類と特徴
🔴 急性膵炎
膵液の消化酵素が膵臓自身を消化してしまう急性の炎症です。
主な原因
- アルコールの過剰摂取(全体の約30〜40%)
- 胆石(胆管に詰まって膵液の流れが妨げられる)
- その他(薬剤・感染・自己免疫など)
症状
- みぞおち〜左上腹部の激しい痛み
- 背中への放散痛(前かがみになると少し楽になる)
- 吐き気・嘔吐
- 発熱
重症になると入院・集中治療が必要になることがあります。アルコールを多く飲んだ翌日に強いみぞおちの痛みが出た場合は、早めに受診してください。
🟡 慢性膵炎
長期にわたるアルコール摂取・繰り返す急性膵炎などにより、膵臓の組織が少しずつ壊れて線維化(固くなる)していく状態です。
特徴的な症状
- みぞおち〜背中への繰り返す鈍い痛み
- 脂肪の多い食事の後に悪化しやすい
- 消化不良・脂肪便(油っぽい便・水に浮く便)
- 体重減少・栄養不良
- 長期化すると糖尿病を合併することも
慢性膵炎は膵臓がんのリスク因子でもあるため、定期的な検査が重要です。
🟢 膵嚢胞(すいのうほう)
膵臓の中に液体が溜まった袋状の病変です。エコーやMRIで偶然発見されることが多く、多くは良性ですが、種類によっては悪性化する可能性もあるため経過観察が必要です。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 仮性嚢胞 | 急性膵炎後などにできる。自然に消えることも |
| IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍) | 膵管に発生。サイズ・形態によって手術を検討 |
| 粘液性嚢胞腫瘍(MCN) | 女性に多い。悪性化リスクあり |
⚠️ 膵臓がん——早期発見が難しい理由
膵臓がんは発見が遅れやすく、予後が厳しいがんのひとつとして知られています。その理由は:
- 膵臓が体の奥深くにあり、初期症状が出にくい
- 症状が出たときにはすでに進行していることが多い
- エコーでも見えにくい部位がある
膵臓がんのリスク因子
- 慢性膵炎・IPMN
- 糖尿病(特に急に発症・悪化した場合)
- 喫煙
- 肥満
- 家族に膵臓がんの方がいる
見逃したくないサイン
- 背中の鈍い痛みが続く
- 体重が急に減った(食欲不振を伴う)
- 黄疸(皮膚・白目が黄色くなる)
- 急に糖尿病と診断された・血糖コントロールが急に悪化した
- 新たな糖尿病発症と同時の腹部の不快感
これらのサインがある場合は早めに受診し、CT・MRI・血液検査(腫瘍マーカー:CA19-9)などの精密検査を受けることをおすすめします。
エコーと膵臓——見えにくい臓器
腹部エコーは胆嚢の観察には非常に有効ですが、膵臓はエコーで見えにくい場合があります。
理由
- 胃や腸のガスが膵臓の前に位置し、超音波が遮られる
- 膵臓が体の奥深くにある
- 肥満の方では特に観察が難しい
エコーで十分見えない場合は、造影CT・MRI(MRCP)などの精密検査が行われます。膵臓の詳細な評価にはCTやMRIのほうが優れているとされています。
膵臓を守る食事と生活習慣
🍽️ 膵臓にやさしい食習慣
摂りたいもの
- 食物繊維が豊富な野菜・豆類:血糖値の急上昇を抑え、インスリンの負担を軽減
- 良質なタンパク質(魚・大豆・卵):消化しやすく膵臓への負担が少ない
- 抗酸化食材(緑黄色野菜・ブルーベリー・トマト):膵臓の炎症を抑える
控えたいもの
- アルコール:膵炎の最大リスク因子。慢性膵炎の方は禁酒が原則
- 脂肪の多い食事(揚げ物・脂身):膵液の分泌を増やし、膵臓に負担をかける
- 精製された糖質・甘い飲み物:血糖値を急上昇させ、インスリン分泌を酷使する
🚭 禁煙
喫煙は膵臓がんの明確なリスク因子です。禁煙は膵臓を守るために最も効果的な生活習慣のひとつです。
🏥 定期的な検査
膵臓は「沈黙の臓器」だからこそ、症状がなくても定期的に画像検査(エコー・CT)を受けることが大切です。特に慢性膵炎・IPMN・糖尿病のある方は、定期的なフォローアップを忘れずに。
まとめ
- 膵臓は消化酵素(外分泌)とインスリン(内分泌)というふたつの機能を持つ多機能臓器
- 急性膵炎:アルコール・胆石が主な原因。みぞおち〜背中の激しい痛みが特徴
- 慢性膵炎:繰り返す腹痛・消化不良・体重減少。膵臓がんのリスク因子
- 膵嚢胞:多くは良性だが種類によって経過観察・手術が必要
- 膵臓がん:早期発見が難しい。背中の痛み・体重減少・黄疸・新たな糖尿病発症には注意
- エコーで見えにくい場合はCT・MRIで精密検査を
「沈黙の臓器」だからこそ、症状が出る前に知識を持ち、定期的に見てもらうことが自分の体を守ることになります 🌸
次回予告 🌿
次回は【整う、みぞおちノート④】肝臓と脂肪肝|沈黙の臓器を守る食事と生活習慣。
「疲れやすい」「お酒をよく飲む」「健診で肝機能の数値が高かった」——肝臓からのサインと、脂肪肝を防ぐ食事・生活習慣をお伝えします 🌿
整う、うずうずノート


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